配当所得の3つの課税方式
- 上場株式の配当は3つの課税方式から選択可能
- 所得が低い人は総合課税+配当控除で税率が下がる
- 株式譲渡損失と相殺するなら申告分離課税を選択
- 2023年分から所得税と住民税で異なる課税方式の選択不可に
上場株式の配当所得は、納税者が3つの課税方式から有利なものを選択できる珍しい仕組みになっています。選択次第で実効税率が0%〜30%超まで変動するため、自分の所得・他の損益状況を踏まえた最適化が重要です。
3つの課税方式の比較
| 方式 | 税率 | 配当控除 | 譲渡損益との通算 | 確定申告 |
|---|---|---|---|---|
| 総合課税 | 累進5〜45%+住民10% | あり | 不可 | 必要 |
| 申告分離課税 | 20.315% | なし | 可能 | 必要 |
| 申告不要 | 20.315%(源泉のみ) | なし | 不可 | 不要 |
総合課税:配当控除の活用
総合課税を選ぶと、配当所得は給与・事業所得などと合算され、累進税率が適用されます。一見不利に見えますが、配当控除という強力な税額控除があります。
配当控除の率
| 課税総所得金額 | 配当控除(所得税) | 配当控除(住民税) |
|---|---|---|
| 1,000万円以下 | 10% | 2.8% |
| 1,000万円超部分 | 5% | 1.4% |
所得別の実効税率(総合課税+配当控除)
| 課税所得 | 所得税率 | 配当控除後の実効税率 |
|---|---|---|
| 195万円以下 | 5% | 約7.2% |
| 195万〜330万 | 10% | 約7.2% |
| 330万〜695万 | 20% | 約17.2% |
| 695万〜900万 | 23% | 約20.2% |
| 900万〜1,800万 | 33% | 約30.2% |
※ 復興特別所得税を含む概算。住民税控除も考慮済
配当控除を加味すると実効税率が約7.2%まで下がるため、申告分離20.315%より大幅に有利。年金生活者・低所得者・専業主婦などは要検討。
申告分離課税:損益通算が可能
株式の譲渡損失(売却損)が出ている年は、申告分離課税を選ぶことで配当と相殺できます。配当100万円・譲渡損失80万円の場合、課税対象は20万円のみとなります。
過去3年の繰越損失とも通算可能
株式譲渡損失は3年間繰越できるため、過去の損失とも相殺できます。譲渡益・配当に対する税負担を大幅に軽減する強力な節税手段です。
申告不要制度:そのままで完結
特定口座(源泉徴収あり)で受け取った配当は、確定申告をしなくても課税が完結します。20.315%が源泉徴収されており、それ以上の手続きが不要です。
申告不要を選ぶべきケース
- 課税所得が900万円超で、総合課税より分離20.315%が有利
- 配偶者控除・扶養控除を受けるため、合計所得を増やしたくない
- 国民健康保険料・介護保険料の算定基準を上げたくない
- 株式譲渡損失がなく、確定申告の手間を省きたい
所得別の最適な選び方
課税所得330万円以下:総合課税
配当控除で実効税率が7.2%まで下がるため、申告分離20.315%より大幅に有利。年間配当が10万円なら、税負担差は約1.3万円。
課税所得330万〜695万円:総合課税が僅かに有利
実効税率17.2%で、申告分離20.315%より3%程度有利。手間と節税効果を比較して判断。
課税所得695万円超:申告分離または申告不要
総合課税の実効税率20.2%以上となり、申告分離20.315%とほぼ同等以上。譲渡損失と通算するなら申告分離、それ以外なら申告不要。
課税所得900万円超:申告不要
総合課税の実効税率が30%超に。手間なく20.315%で完結する申告不要が圧倒的に有利。
2023年改正:課税方式の統一
2022年分までは「所得税は総合課税、住民税は申告不要」という有利な使い分けが可能でしたが、2023年分(2024年申告)から所得税と住民税で同じ課税方式を選ぶ必要があります。
改正の影響
- 低所得者:これまで以上に総合課税(配当控除)を活用するメリット
- 高所得者:申告分離か申告不要を一貫して選択
- 国民健康保険加入者:所得税で総合課税を選ぶと住民税も総合課税となり、保険料が増える可能性
外国株配当の二重課税問題
米国株などの配当は、現地で源泉徴収(米国は10%)された後、日本でも20.315%課税されます。確定申告で外国税額控除を申請すれば、米国分の一部を取り戻せます。
外国税額控除の限度額
限度額 = その年の所得税額 × (国外所得 ÷ 全所得)
米国株の配当が年20万円・源泉徴収2万円の場合、その2万円が外国税額控除の対象。確定申告で還付されます。
NISA口座で受け取った米国株配当は、米国で10%源泉徴収されますが、日本では非課税のため外国税額控除の対象外。米国分は還付されません。
まとめ
配当所得の課税方式選択は、年間数千円〜数十万円の税負担差を生みます。基本的な考え方は次の通りです。
- 課税所得330万円以下なら総合課税+配当控除
- 譲渡損失があるなら申告分離課税で通算
- 所得が高く譲渡損失がないなら申告不要制度
2023年分以降は所得税と住民税で同じ方式を選ぶ必要があるため、国民健康保険料への影響も含めた総合判断が必要です。
最後に確認するポイント
総合課税を選ぶと、合計所得金額に配当が加算されます。これにより、扶養控除(年48万円超)・配偶者特別控除の判定で外れる可能性があります。専業主婦の方は要確認です。
参考情報
2件- 国税庁 配当所得 (新しいタブで開く) nta.go.jp
- 国税庁 配当控除 (新しいタブで開く) nta.go.jp