
個人向け国債を中途換金すると、入金額が額面より少なく見える場合があります。その金額だけで保有期間全体の損益は判断できません。既に受け取った利子と、換金時に差し引かれる調整額を一緒に確認する必要があります。本稿は通常課税の個人が保有する変動10年を中心に、金利を仮定して計算します。制度の確認日は2026年9月6日です。
発行から1年と、申込から入金までを分ける
財務省の中途換金FAQでは、変動10年・固定5年・固定3年は、第2期利子支払日となる発行から1年経過後に原則換金できるとしています。購入を申し込んだ日から365日と数えるのではなく、保有銘柄の発行日と利払日を確認します。
申込日と現金が使える日も異なります。同FAQでは申込日を含めおおむね3営業日後と案内されていますが、受付時刻等で違うため取扱金融機関の受渡予定日を確認します。月曜朝に家賃が引き落とされるのに、その月曜に換金を申し込む計画では間に合わない可能性があります。
保有者本人の死亡や、災害救助法の適用対象となる大規模な自然災害による被害には特例があります。旅行費や通常の家計不足も同じ例外になるという意味ではありません。必要な証明書と手続きは取扱先へ確認します。
直前2回の税引前利子に0.79685を掛ける
第3期利払日以降の通常の換金では、額面金額に経過利子相当額を足し、直前2回分の各税引前利子相当額×0.79685を引く仕組みです。0.79685は1から20.315%を引いた値です。既に税引後で受け取った利子へさらに掛けると、控除を少なく計算してしまいます。
| 手元の数字 | 使い方 |
|---|---|
| 額面金額 | 換金する国債の額面。口座全体の時価ではない |
| 直前2回の税引前利子 | 二つを合計して0.79685を掛ける |
| 経過利子相当額 | 直近利払いから換金までの期間に応じる |
| 過去の税引後受取利子 | 保有期間の累計を比較するため別に集計 |
変動10年は半年ごとに利率が変わるため、現在の年率だけを元金に掛けて「一年分の控除額」とするのは不正確です。直前の二期間が異なる利率なら、それぞれの利子を使います。初期の換金には初回利子の調整が関係する場合もあり、公式シミュレーションと明細で照合します。
100万円を2年後に換金する仮定
額面100万円を発行時に購入し、最初の二つの半年期間は年1%、次の二つは年2%だったと仮定します。各期をちょうど半年とし、4回目の利払いを受けた直後で経過利子相当額はゼロ、初回調整なし、端数処理を省いて計算します。
| 半年の期間 | 税引前利子 | 税引後利子の概算 |
|---|---|---|
| 第1期・年1% | 5,000円 | 3,984.25円 |
| 第2期・年1% | 5,000円 | 3,984.25円 |
| 第3期・年2% | 10,000円 | 7,968.50円 |
| 第4期・年2% | 10,000円 | 7,968.50円 |
受取済み利子の合計は23,905.50円。換金時の調整額は(10,000+10,000)×0.79685=15,937円です。換金入金額は100万円−15,937円=984,063円となります。
換金時だけを見ると100万円に届きませんが、受取済み利子との合計は1,007,968.50円です。この仮定では最初の一年の税引後利子が残る計算になります。過去の利子を既に使っていれば、その分の現金は手元にはありません。運用成績の合計と、いま支払いに使える残高を分けて扱います。
30万円必要なら額面30万円で足りるか
同じ条件で一部だけ換金する場合、額面30万円の入金額は30万円×0.984063=295,218.90円です。過去に受け取った利子を別用途に使っていて、換金代金だけで30万円を払うなら不足します。
国債は額面1万円単位で一部換金できます。この仮定で額面31万円なら入金概算は305,059.53円で、30万円を超えます。必要額を調整後の受取率で割り、換金単位へ切り上げる考え方です。実際にはその日の経過利子や端数処理を取扱先で確認します。
残す69万円には将来の利払いが続くため、口座にある100万円分の過去利子を、一部換金31万円の損益へ全額足さないようにします。部分換金の比較では額面比率をそろえ、残存額と換金額それぞれの明細を作ります。
利払い直前まで待てば控除が消えるわけではない
調整は「直前2回」に対して行われるため、利払日を越えると参照する期間が移ります。新しい半年の利率が上がっていれば調整額も変わり、待った日数だけ必ず手取りが増えると単純化できません。日付を二つ指定して公式シミュレーションで比べます。
一方、利払いの直前と直後で、利子を二回受け取れるわけではありません。直前の換金で計算される経過利子相当額と、利払日に受け取る利子は、同じ期間に対応する部分があるからです。換金予定日ごとに「その時点までの既受取額」と「今回入金額」の二列を使うと重複を防げます。
満期まで保有する場合の償還と中途換金も別です。満期償還に中途換金調整額を引くことはしません。残り期間が短い場合は、必要な支払日と償還日を並べ、資金が間に合うかを先に調べます。
税務明細と支払予算を混ぜない
ここで示したのは税引後利子と換金代金による現金の概算です。確定申告や他の上場株式等との損益通算を含む最終税額は計算していません。中途換金の明細に税務上の損益が表示される場合も、家計上の利息合計とは別欄で確認します。
保存する資料は、銘柄と発行日、換金額面、各利払明細、換金の計算書、入金予定日です。利払明細に税引前・源泉税・税引後の三列を残せば、税引後利子に再び税率を掛けた計算ミスを見つけやすくなります。
名義人の死亡等による特例を使う場合は通常換金の仮定例をそのまま使わず、書類と受付手順を取扱先へ確認します。また、窓口の休業や本人確認に必要な日数も、緊急の支払計画では余裕に含めます。
保有期間がまだ一年未満で、その間に資金を使う可能性があるなら、購入前の預け分けが先です。定期預金と個人向け国債の支払時期別比較で、必要な現金を取り分ける方法を確認できます。
換金の損益表を作るときは、過去利子の累計を「運用成績」欄へ置き、普通預金に残っている利子だけを「支払可能額」へ置きます。すでに消費した利子まで次の振込原資として足すと、計算上は足りていても口座残高が不足します。
参考情報
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