
セブン&アイの「営業利益61.4%増」と「122.4%増」は、違う決算を指しているわけではありません。前者は公表実績同士、後者は非連結化の影響を除いた比較です。増益率の大きさだけで判断せず、比較範囲、北米の燃料利益、国内の商品採算を順に見ると、改善が続く条件を具体化できます。
2026年7月9日公表の2027年2月期第1四半期資料を、9月6日に確認しました。会社ごとの決算期の違いにも注意し、国内と海外の月次を無条件に同じ期間として足しません。
61.4%増と122.4%増は分母が違う
| 当四半期の指標 | 実績 | 公表実績との比較 |
|---|---|---|
| 営業収益 | 2兆3,788.19億円 | 14.3%減 |
| 営業利益 | 1,050.39億円 | 61.4%増 |
| 親会社株主帰属純利益 | 606億円 | 23.6%増 |
一方、決算サマリーはヨーク・ホールディングス、セブン銀行の非連結化の影響を除き、営業利益122.4%増と示しています。数字の矛盾ではなく、前年の利益をどこまで含めたかの違いです。「売上減少=店舗で売れなくなった」とも、「増益率が大きい=店舗採算が同率で改善」とも言えません。
例えば前年の利益が継続事業50、除外事業30、当年が継続事業100なら、合計比較は25%増、同じ事業の比較は100%増です。これは会社の再編額ではなく、分母の違いを示す仮定です。組替え表の調整対象まで確認して初めて、改善幅を比較できます。
燃料の売上と荒利は逆方向にも動く
会社は北米7-Eleven, Inc.の営業利益(のれん償却前)880億円について、燃料荒利の改善を挙げています。北米の既存店商品売上は1.4%増です。利益の増加が燃料マージンによるものか、店内の商品販売によるものかで、次の四半期へ継続する条件が違います。
| 燃料販売の仮定 | 前年 | 当年 |
|---|---|---|
| 販売量 | 100ガロン | 95ガロン |
| 売価/仕入原価 | 4ドル/3.7ドル | 3.5ドル/3.1ドル |
| 売上/荒利 | 400ドル/30ドル | 332.5ドル/38ドル |
販売量と売上が減っても、1ガロン当たり荒利が広がれば荒利総額は増えます。逆に価格差が平常化すると、同じ量でも利益は縮みます。ここへ店舗の人件費や賃料がかかるので、荒利は営業利益ではありません。燃料荒利、販売量、店内商品売上を別々に追う理由です。
既存店が伸びても本部利益は同率で増えない
国内セブン‐イレブン・ジャパンの既存店売上は2.0%増、商品荒利率は32.0%でした。加盟店が顧客に販売した額と、本部が連結売上として計上する収入は同じではありません。チェーン全店売上を連結営業収益に足すと重複や集計範囲の混同が起きます。
仮に客数が2%減って客単価が4%増えた店なら、売上は0.98×1.04=1.0192で1.92%増です。売上増だけでは来店の回復を確認できません。また、売上100・荒利率32%なら荒利32ですが、売上102・荒利率31%なら31.62となり、増収でも荒利は減ります。
新商品の販促や改装は売上への投資ですが、費用が先行することがあります。既存店売上、客数、荒利率、本部の販売管理費を並べ、売上の伸びが費用増を吸収したかを確認します。全国の平均だけでは、不採算店舗の整理や地域差も隠れます。
自己株式の取得と消却を二重にEPSへ加算しない
基本的なEPSの分母は、自己株式を除く期中平均株式数です。自社株取得で市場にある株式が減ることと、取得済みの自己株式を消却することは別です。すでに分母から除かれた株式の消却だけで、EPSがもう一度押し上がるわけではありません。
仮に利益90、発行済株式100、自己株式10ならEPSは90÷90=1です。自己株式10を消却すると発行済90・自己株式0になりますが、分母は90のままです。新たな取得の時期や利益の変化を考えず、消却割合をそのままEPS成長率に足す計算はできません。
資本政策を評価する際は、取得に使った現金と店舗・物流への投資資金も比較します。発行済株式数だけを見て「価値が同率で増える」と扱わず、取得価格、利益の持続性、残った資金余力を確認する方が実態に近づきます。
次に見るのは商品利益と投資後の収支
| 見方 | 判断を分ける条件 |
|---|---|
| 強気 | 北米の商品販売・荒利が伸び、国内も販促費を吸収 |
| 中立 | 燃料利益の増加が支えるが、商品採算の改善は限定的 |
| 弱気 | 燃料荒利の縮小と客数減、投資負担が重なる |
小売の連結範囲と利益段階の比較はイオンの小売利益と再編効果でも確認できます。決算の出発点は、比較範囲をそろえた営業利益です。その後に商品と燃料、最後に株数と資金配分を見ると、増益の原因を重複して数えずに済みます。
参考情報
3件- 2026年度第1四半期決算サマリー (新しいタブで開く) セブン&アイ
- 第1四半期決算補足資料 (新しいタブで開く) セブン&アイ
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