富士通(6702)を見るときは、Uvanceの成長率とサービス全体の採算を組み合わせます。売上が伸びても人件費や外注費が増えれば利益は残らず、AIで作業時間が減っても契約単価まで下がれば増益とは限りません。2026年7月30日公表の2026年度第1四半期(2026年4〜6月)を使い、受注、売上、利益、回収までのつながりを確認します。

サービスの増収と利益率改善を確認する
富士通が開示する調整後営業利益は、通常の営業利益と同じ数字ではありません。事業を継続的に比較するための会社定義の指標として使い、最終的には調整項目と会計上の利益も照合します。まず比較対象の年度と指標名をそろえることが、増益率を読む前提です。
| 2026年4〜6月実績 | 売上収益 | 調整後営業利益/利益率 |
|---|---|---|
| 連結全体 | 7,793億円 | 549億円/7.0% |
| サービスソリューション | 5,489億円 | 628億円/11.4% |
| サービス内のUvance | 1,922億円 | この売上だけから利益は算出できない |
サービスの前年同期利益率は9.3%で、今回は2.1ポイント改善しました。一方、サービスの利益が連結全体を上回るのは、他事業や全社費用等があるためです。表のUvanceはサービスに含まれるため、5,489億円へ1,922億円を足して事業規模を計算してはいけません。出典:富士通2026年度第1四半期決算説明資料。
Uvanceの伸びと受注残を二重計上しない
Uvanceは、業種をまたぐ課題解決やデジタル変革を進める事業の枠組みです。従来のサービス売上と別会社の売上のように足すのではなく、サービス内でどれだけ比率が変わったかを見ます。既存顧客の案件を新しい枠組みで分類した部分と、新規需要を獲得した部分は、同じ意味の成長ではありません。会社の増減説明を併せて読む必要があります。
受注も、その四半期の売上ではありません。複数年の運用契約を一括で受注した場合、売上は契約の履行に応じて後の期間へ分かれます。受注の前年同期比が高くても、すぐに同じ率で売上や利益が伸びるとは限りません。大型案件の有無と、会社が示す納期ベースの比較を確認し、単発案件による山をならして考えます。
採算面では、案件の立ち上げ時に採用・教育・外注が先行することがあります。受注増を評価するときに、人員を増やすだけの拡大か、標準化したサービスを繰り返し提供できる拡大かを分けます。後者なら売上ほど費用を増やさずに済む余地がありますが、個別改修が多ければ標準化の効果は弱まります。
AIで工数が減っても利益が増えるとは限らない
次の表は富士通の実績・目標ではない、固定価格の仮想案件です。売上100、原価80なら利益は20です。AIや再利用で原価を72へ減らせば、価格を維持できる場合の利益は28になります。しかし顧客へ値下げし売上も90へ下がると、利益は18になり、作業が効率化しても当初より減益です。
| 仮想案件 | 売上 | 原価 | 利益 |
|---|---|---|---|
| 導入前 | 100 | 80 | 20 |
| 原価だけ10%削減 | 100 | 72 | 28 |
| 原価削減と10%値下げ | 90 | 72 | 18 |
時間単価で請求する契約なら、作業時間の短縮は請求額の減少にもつながります。価値に応じた固定価格、月額利用、追加提案など、効率化を利益として残せる契約かが重要です。導入費、AI利用料、レビューや品質保証に必要な人件費を無視した試算は使えません。上の原価には必要な費用を含めたという仮定であり、現実の削減率を示していません。
調整後利益と現金化の差を点検する
継続事業の改善を調整後利益で見た後は、調整前へ戻ります。構造改革費用などを除く説明があっても、その支出が実際の現金を減らすことはあります。毎年似た費用が繰り返されるなら、一時的という分類だけで採算判断から外さず、数年分の推移と終了予定を確認します。
次に売上債権や契約資産を見ます。仕事の進捗に応じて収益を計上しても、請求や検収まで現金が入らない契約があります。売上増に対して回収待ちの残高が速く増えているなら、契約条件や案件の進捗を調べる理由になります。四半期ごとの季節性もあるため、単純な前期末比較だけで回収が悪化したと決めません。
純利益だけを前年と比べると、事業売却などの影響で通常の仕事の改善を見失うこともあります。サービスの利益率、連結営業利益、非継続事業等を含む最終利益を別々に置き、どの段階で差が生まれたかをたどると、事業再編中の富士通を読みやすくなります。
次の四半期は成長の中身と回収を見る
| 見方 | 判断を支える条件 |
|---|---|
| 強気 | サービスの売上成長と採算改善が続き、標準化の効果が回収にも表れる |
| 中立 | Uvanceは伸びるが人材投資も増え、サービス全体の利益率は横ばい |
| 弱気 | 大型受注の売上化が遅れ、低採算案件や繰り返す改革費用が利益を圧迫する |
確認する順序は、サービス全体の売上と利益率、Uvanceの構成比、大型案件を調整した受注の説明、調整項目と営業キャッシュフローです。成長キーワードの数ではなく、同じ顧客へ高い付加価値を提供しながら、費用と回収期間を抑えられたかを追います。四半期実績を4倍して年度の確定利益とする読み方はせず、通期計画は別枠で管理します。
企業別の決算分析一覧から、利益の構造が異なる企業も比較できます。
参考情報
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