レーザーテック(6920)は受注が回復しても、その年度の売上が減ることがあります。装置を受注し、製造・納入して売上を認識するまでに時間がかかるためです。2026年8月6日公表の2026年6月期通期決算は、この時間差を確認する実例です。本稿ではEUV関連の成長期待をそのまま当期利益へ置き換えず、受注、売上、サービス、現金の順に読みます。

受注は回復、売上と営業利益は減少
| 2026年6月期通期実績 | 金額 | 比較の意味 |
|---|---|---|
| 受注高 | 2,375.04億円 | 前期1,052.26億円から回復 |
| 売上高 | 2,304.85億円 | 前期比8.3%減 |
| 営業利益 | 1,052.59億円 | 前期比14.3%減 |
| サービス売上 | 586.46億円 | 前期比36.5%増 |
出典:レーザーテック2026年6月期決算短信。会社は前期の受注高の影響から当期売上が減少したと説明しています。足元の受注回復と過去受注の売上化は別の時間軸にあり、減収だから新規需要も同じ割合で減っている、とは読めません。
受注高は売上高へ加算するものではありません。同じ装置について、注文時点と売上認識時点を別々に捉えています。両方を足して事業規模とすると二重計上になります。将来の売上予測には受注の金額だけでなく、納入予定、顧客の準備、製品構成を確認する必要があります。
検収がずれると受注残が増えることもある
検査装置では、顧客の要求を満たす性能確認や立ち上げの工程が重要です。出荷済みでも契約上の売上認識条件を満たしていなければ、売上にならない場合があります。実際の会計処理は契約に従うため、全ての装置で出荷と検収を同一の固定期間と考えることはできません。
受注残が増えた場合は、新しい注文が多かったのか、売上化が遅れたのかを分けます。前者でも先の年度の案件が多ければ今期の利益寄与は限られます。後者では顧客側の工場準備、装置の立ち上げ、仕様など、どの工程が止まったかによって回収見通しが変わります。
例えば期首受注残500億円、新規受注200億円、当期売上化250億円なら、取消し・為替等がない仮定では期末450億円です。売上化が50億円遅れれば期末500億円になります。受注残が多い方が当期売上も多いという関係ではないことが分かります。
大型装置1件のずれが利益を動かす仮定
会社の実際の価格や原価ではなく、1台20億円、変動費10億円、期間固定費30億円という仮定を置きます。完成台数ではなく、その期間に売上認識した台数で計算します。
| 仮定の計算 | 5台を売上認識 | 1台が翌期へ延期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 100億円 | 80億円 |
| 変動費 | 50億円 | 40億円 |
| 固定費 | 30億円 | 30億円 |
| 営業利益に相当する残額 | 20億円 | 10億円 |
売上は20%減でも利益は半減します。翌期に検収されるだけなら契約の総売上は変わらない可能性がありますが、当期の固定費は残ります。延期した1台が取消しになる場合や追加調整費がかかる場合は、単なる年度間のずれでは済みません。
この例の利益率を実際の装置へ当てはめてはいけません。製品別価格、外注費、研究開発費、サービス収益の構成は違います。四半期の利益率低下を評価するときに、採算そのものの悪化と台数・時期の影響を区別するための計算です。
サービスの拡大と、資金回収を確認する
当期は半導体関連装置の売上が減る一方、サービス売上が増えました。サービスは導入後の装置に対する保守などを通じて収益を生むため、新規装置の売上と異なる下支えになり得ます。ただし保守対象、稼働状況、契約の範囲、対応人員や部品費があるため、全額が固定利益になるわけではありません。
装置が顧客の工程で継続使用され、必要な支援を効率よく提供できれば、導入基盤の蓄積がサービス収益につながります。一方、新規装置販売の弱さが長く続けば将来の保守対象の増加も鈍ります。装置売上とサービス売上を分けたうえで、互いの時間差を確認します。
資金面では前受金と売掛金、棚卸資産を見ます。受注時の前受金があれば売上計上より先に現金が入りますが、将来の製造・納入義務が残ります。逆に検収前の仕掛品が増えれば、売上になる前に資金を使います。前受金を自由な余剰資金と扱ったり、在庫増を必ず不良在庫と扱ったりしません。
技術開発費の増加も短期利益だけでは評価しにくい項目です。顧客の次の工程で必要な性能を満たすか、開発が量産装置として採用されるかを追います。高い株価評価は株主の期待を示しますが、それ自体が研究開発工程の遅れを引き起こすという因果関係ではありません。
受注・検収・保守を一つの数字へまとめない
| 見方 | 確認する条件 |
|---|---|
| 強気 | 受注回復が予定どおり売上化し、サービスも採算を保って伸びる |
| 中立 | 需要は回復しているが検収時期の違いで四半期利益が振れる |
| 弱気 | 顧客の投資延期と立ち上げ遅れが重なり、在庫・費用負担が増える |
次の決算では受注高と受注残を確認し、装置売上、サービス売上、利益率へ進み、最後に現金回収を照合します。当期の減収と受注回復が両立する理由を説明できれば、単なるAI需要の強弱より具体的に業績を評価できます。会社の翌期予想は別期間の計画として扱い、当期の実績表には混ぜません。
企業別の決算分析一覧から、利益の構造が異なる企業も比較できます。
参考情報
1件- 2026年6月期決算短信(8月6日) (新しいタブで開く) レーザーテック/TDnet
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