余裕資金100万円を繰上返済するか、NISAで運用するかは、住宅ローン金利と期待利回りの大小だけでは決まりません。返済すれば現金は戻せず、運用すれば必要な時に値下がりしている可能性があります。まず残しておく現金を決め、同じ期間の返済額と運用額を分けて計算します。制度資料は2026年9月6日に確認し、以下の金利や収益率は全て仮定です。

比較する前に100万円が本当に余るか調べる
預金500万円があっても、全額が投資や繰上返済に回せるとは限りません。生活費の不足に備える300万円と、二年以内の教育費100万円を別に確保する家計なら、今回比べる上限は残り100万円です。この300万円は万人共通の適正額ではなく、収入の途絶が何カ月続くかを想定した家庭内の設定です。
| 仮定の預金の用途 | 金額 | 判断すること |
|---|---|---|
| 収入減に備える現金 | 300万円 | 毎月の最低生活費で何カ月もつか |
| 二年以内の教育費 | 100万円 | 支払月までに現金化できるか |
| 今回の比較対象 | 100万円 | 返済・運用・現金維持を比較する |
住宅ローンを減らしても、翌月の入院費や転職中の生活費を住宅からすぐ取り出すことはできません。NISAも預金ではなく、商品によって価格変動や売却代金の受取日が異なります。両方に回す案を考える場合にも、この現金の区分を先に作ります。
返済額軽減型なら毎月いくら減るか計算する
住宅金融支援機構の繰上返済案内では、毎月の返済額を維持して期間を短くする方法と、期間を維持して毎月の返済額を減らす方法を区別しています。定年までに完済したいのか、毎月の家計を楽にしたいのかで、比較する方式が変わります。
仮に残高2,000万円、残り10年、固定年率2%、元利均等返済、毎月返済のみとします。返済額軽減型で100万円を繰上返済し、手数料をゼロとすると、月の返済額は約18万4,027円から約17万4,826円へ減り、差は約9,201円です。計算では月利を2%÷12、返済回数を120回としています。
| 100万円の繰上返済の効果 | 概算 |
|---|---|
| 毎月の返済減少 | 9,201円 |
| 120回の返済減少合計 | 110万4,161円 |
| うち元本100万円を除く利息軽減 | 10万4,161円 |
毎月の返済額は「残高×月利÷{1−(1+月利)のマイナス返済回数乗}」で計算しています。実契約の端数処理や経過利息で差が出ます。期間短縮型に同じ金額を入れた場合の結果は別なので、この表の利息軽減額をそのまま使わず、金融機関から方式別の返済予定表を取得します。
住宅ローン控除は実際に減る額を差し引く
繰上返済で年末残高が減ると、住宅ローン控除も減る場合があります。ただし、所得税額、住民税からの控除限度、対象借入限度額などによって実際の減少額は異なります。借入残高に控除率を掛けた額を、誰でも満額受け取れるとは限りません。
例えば適用される控除率を0.7%、比較する年末の対象残高の差を100万円と仮定すると、計算上の控除差は7,000円です。これは読者の契約に適用される率や控除額を確定する例ではありません。その年の利息軽減から実際の控除減少と手数料を引いて比べます。元本が毎月減るため「100万円×金利差」を全期間に固定して掛けるだけでは正確になりません。
国税庁の償還期間の説明では、繰上返済後に要件を満たさなくなると、その年以後に住宅ローン控除を受けられません。ここでの10年以上は残り期間が10年あるかではなく、当初の最初の返済月から短縮後の最終返済月までで判定します。単に残りが9年になっただけで控除が消えると誤解しないことが重要です。
NISAの10年後を三つの仮定で置く
金融庁のNISA制度概要にある非課税は、対象商品の運用益への課税を軽減する仕組みで、運用益や元本を保証するものではありません。100万円を一括投資し、途中の引出しがなく、費用控除後の収益率が毎年同じと仮定した場合の10年後を比較します。
| 毎年の仮定収益率 | 100万円×(1+収益率)の10乗 | 元本との差 |
|---|---|---|
| −2% | 約81万7,073円 | 約−18万2,927円 |
| 0% | 100万円 | 0円 |
| +3% | 約134万3,916円 | 約+34万3,916円 |
三つの数字は予測や発生確率ではありません。現実には毎年一定の率で動かず、十年目に必要額へ届くとも限りません。また、繰上返済の110万4,161円は毎月少しずつ減る支払の合計で、十年後に一括で受け取るお金ではありません。NISAの最終残高と同じ性質の数字として順位を付けることはできません。
厳密に比べるなら、返済を減らした分を毎月貯めるか運用するか、その利率もそろえます。返済減少分を生活費へ使う家庭なら、効果は資産残高ではなく家計の余裕です。家計改善と十年後の資産形成のどちらが目的かで、見たい結果が変わります。
金利が変わる契約では一つの数字で決めない
上の返済例は固定金利です。変動金利の契約なら、今の金利が続く場合と、途中で上がる場合の返済予定を別に作ります。金利の見直しと返済額の見直しは同じ時期とは限らず、いわゆる5年ルール等の有無も契約によります。返済額が据え置かれていても利息負担が一定とは限りません。
判断としては、毎月の収支が厳しいなら返済額軽減型の効果を確認する、長期間使わないお金で値下がりに耐えられるなら運用案を検討する、近い支出や収入の変化が読めないなら現金を保つ、という分岐になります。全額を一度にどちらかへ回す以外に、対象100万円を分ける案も比較できます。
最後に金融機関から、繰上返済前後の月額・総利息・完済月・手数料を受け取り、控除の実際の減少を確認します。NISA側には商品費用、現金化の期日、許容できる損失額を記入します。「期待利回りが高い」という一項目ではなく、現金を使う時期まで含めた比較表ができてから金額を決めます。
団体信用生命保険の保障も比較から抜かないようにします。繰上返済で借入残高を減らすと、残債を対象とする保障でカバーする金額も変わります。ただし、この点だけを理由に借金を残す判断はできません。保障対象の死亡・疾病の条件、別に加入している保険、遺族の収入と必要な生活費を合わせて確認します。返済後に預金が薄くなる家庭では、利息軽減よりも、病気や収入減のときに使える現金の減少が先に問題になる場合があります。
参考情報
3件- 繰上返済の二つの方式 (新しいタブで開く) 住宅金融支援機構
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