基本給が変わっていないのに秋の手取りが減ったときは、今月の額面だけでなく、標準報酬月額がいつの給与で決まったかを確認します。健康保険や厚生年金の保険料は、毎月の実額をそのまま掛け算する仕組みではないためです。本稿は会社の社会保険に加入する給与所得者を対象に、2026年9月6日確認の制度と仮定例から、給与担当へ何を尋ねればよいかまで整理します。

4〜6月は働いた月か、支払われた月か
日本年金機構の説明では、定時決定は原則として4・5・6月に受けた報酬を使い、9月から翌年8月の標準報酬月額を決めます。残業した月と残業代の支給月が異なる会社では、勤怠表だけで対象額を計算できません。給与明細の支給月を基準に確認します。
支払基礎日数は原則17日以上の月が対象で、特定適用事業所の短時間労働者では11日以上という扱いがあります。入社時期や休職、育児休業等には別の扱いもあるので、欠勤がある月を含めて単純に3で割らず、会社が算定に使った月と日数を確認します。
| 手元の資料 | 確認する内容 |
|---|---|
| 4・5・6月の給与明細 | 基本給、各手当、実際の支給額 |
| 勤怠・給与規程 | 締日と支払日、欠勤控除の対応 |
| 標準報酬の決定情報 | 改定前後の金額と適用月 |
| 秋の給与明細 | 何月分保険料を控除しているか |
9月分の保険料が9月の給与で引かれるとは限りません。翌月給与から前月分を控除する会社なら、改定が見えるのは10月の明細です。控除月が違うだけなのに会社の計算違いと結論付けないようにします。
税の非課税手当と社会保険の報酬を分ける
社会保険の報酬には基本給以外の残業手当や通勤手当なども含まれます。所得税で非課税となる通勤手当だから、標準報酬にも含まれないという理解は誤りです。複数月分の通勤手当は対象期間へ割り振るなどの処理があるため、支給総額だけで平均を作らず内訳を確かめます。
一方、出張旅費など実費弁償の性質があるものと、労働の対価としての手当は扱いが異なります。名称だけで判断せず、何のために払われた金額かを給与担当へ確認します。賞与の保険料計算も月給とは別なので、月次の変化とボーナスの控除を混ぜないようにします。
標準報酬30万円から32万円なら厚生年金はいくら増える
厚生年金保険料率は18.3%で、一般的な労使折半では本人負担9.15%です。以下は標準報酬月額が30万円から32万円へ変わったと仮定した厚生年金だけの計算です。健康保険、介護保険等の負担は含めません。
| 仮定 | 改定前 | 改定後 |
|---|---|---|
| 標準報酬月額 | 300,000円 | 320,000円 |
| 厚生年金の本人負担 | 27,450円 | 29,280円 |
| 月の差額 | ― | 1,830円増 |
差額は20,000×9.15%=1,830円、12か月同じなら21,960円です。今月の給与が前月と同じでも、この改定だけで手取りは減り得ます。健康保険料率は加入先等で異なるため、厚生年金と同じ率を掛けず、所属する保険者の表で追加します。
逆に給与の増加がそのまま同額の手取り増になるわけでもありません。社会保険料の増減、所得税、住民税、社内積立の各欄を順に差し引きます。給与から引かれた総額だけを見ると、どの制度で変わったのか判別できません。
残業だけ増えても随時改定とは限らない
随時改定の説明では、固定的賃金の変動が起点になります。原則としてその後3か月の報酬、支払基礎日数、従来と2等級以上の差などを確認します。残業手当の増減だけを理由に、毎月標準報酬が変更される仕組みではありません。
基本給が上がった一方で残業が大きく減った場合など、固定給の変化と平均報酬の動く方向にも条件があります。等級差だけで成立を判断しないことが重要です。固定給の変更月、変更後3か月の支給額、現在の標準報酬をそろえて給与担当へ尋ねると、定時決定を待つのか途中改定なのかを説明してもらいやすくなります。
定時決定は毎年の見直し、随時改定は一定の給与変更に対応する見直しです。この二つを混同すると、春の残業だけで年間の手取り全てが決まるように見えてしまいます。入社・退職や休業の事情も含め、実際の適用理由を確認します。
控除増の原因を特定してから家計へ反映する
前月と当月を並べ、額面、健康保険、厚生年金、雇用保険、所得税、住民税、社内控除の差をそれぞれ書き出します。厚生年金だけが変わったのか、保険料率や年齢区分の変更もあったのかで、問い合わせ先と確認する資料が違います。
保険料を小さくするためだけに仕事量を減らす判断は、失う給与と将来給付への影響も含めて考える必要があります。まず改定後の毎月の手取りを家計表へ反映し、定額の貯蓄や積立がその金額で続くかを確認します。原因が分からない場合は「何月分の、どの標準報酬に、どの率を掛けたか」の三点を聞けば、漠然と手取りが少ないという相談から具体的な確認へ進めます。
参考情報
3件- 標準報酬月額の決定時期 (新しいタブで開く) 日本年金機構
- 厚生年金保険料率 (新しいタブで開く) 日本年金機構
- 残業と随時改定 (新しいタブで開く) 日本年金機構
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